スプレーチャート分析
記事引用元:Andrew Simon, MLB.com, 14 Feb., 7 spray charts you need to see to believe (mlb.com)
<記事要約>
Baseball Savant illustratorのような新しいツールを使うことにより、各プレーヤーの打球の方向・フライ/ゴロの打球結果を図化で把握し分析できることが可能となった。記事では、打球結果に顕著な特徴がある7人について紹介している。
①Juan Soto:全方向型パワー
図はキャリア3年間での累計長打の方向を図化したものである。その打球方向は引っ張り方向、センター方向、逆方向にバランスよく分布しているのがわかる。割合は以下のとおりである。
Pulled (to RF): 55 (37.7%)
Straightaway (to CF): 42 (28.8%)
Opposite (to LF): 49 (33.6%)
多くのバッターの長打は引っ張り方向で生じ、2018以降では長打のうち52.7%が引っ張り方向で記録されている。ソトは引っ張り方向以外での長打が91/146本(62.4%)であり、彼の2018のデビュー以降の累計記録で4番目の高さである。
②DJ LeMahieu :ヤンスタでの”right”男(逆方向に強い)
LeMahieuのFAの際、COLの選手にありがちな話であるが、打高の球場であるCoors Fieldを離れても高い打力を維持できるかという懸念があった(注:Coorsは標高の高いところに所在していることから気圧が低く打球が飛びやすく、また、外野も広いことから打者天国として知られている。)
しかしながら、ライナー及びフライの半分以上を逆方向に打つ彼のスタイルにとってはライトスタンドが浅いヤンキースタジアムはより彼に合うことを彼は気づいていていたのかもしれない。2019にヤンキースに入団以降、ホームのヤンスタでは.366(打率)/.421(出塁率)/.642 (長打率)、という素晴らしい成績を残しており、この期間におけるwRC+182の上をいくのはTroutただ一人である。
当期間における36のホームランのうち27本はヤンスタでのホームランであり、うち16本は逆方向へのホームランである。2019以降誰一人として13本以上の逆方向ホームランを放っていない。
③Didi Gregorius:引っ張り or 不発
同じくヤンスタの浅いライトスタンドの特徴が反映された左バッターとしてDidiがおり、引っ張り方向にホームランが集中している(LeMahieuは右バッターであり真逆の傾向である)。DidiはStatcastが導入された2015年から2019年においてNYYでプレーしていた(注:といっても2019はトミージョン手術明けの影響で出場試合数はとても少ない)。
2015年以降、Didiは107本のホームランを放っており、うち98本(91.6%)は引っ張り方向であり、当期間において100本以上のホームランを放った82人のバッターのうちその割合は最も高い。しかも、引っ張り方向でない9本のホームランも右中間スタンドへの打球である。85本以上ホームランを放っているプレーヤーのうち逆方向へのホームランを打っていないのは彼一人だけである。
④大谷翔平:センター方向中心
大谷のキャリアのホームラン数47本のうち24本がセンター方向へのホームランであり、また、センター方向への打球における長打率.792であり、ともに当該期間(2018年~)においてMLBトップの数値である。
⑤Joey Gallo:シフトされるスラッガー(引っ張り型)
Galloは2017及び2018の2年連続で40本ホームランを放っているパワー型の打者である。Galloの打球には2つの大きな特徴があり、一つはフライ割合、もう一つは引っ張り割合である。
Galloのキャリアにおける846打球のうち、たった25本(3.0%)が逆方向へのゴロであり、左バッターとして当該期間における割合が著しく低い一人である。(しかも、25本のうち、9本はバントであり、8本はヒットを記録している)したがって、Galloと対戦するチームの多くがシフトを行うことに不思議はなく、逆側の内野手(ショート及びサード)がシフトをひいた割合は、2020が96.4%であり(Matt Carpenterに次いで2位)、2019においては95.9%でありメジャートップの高さである。
彼がゴロを打つ時そのほとんどは逆方向にはいかないことを対戦チームは当然に把握しているためシフトが有効となっている。
⑥Jose Altuve:ヒットマン
Altuveがデビューした2014以降の彼のヒット数1,205はメジャートップであり、Statcastが導入された2015以降でもBlackmon(1,007本)に次ぐ980本で2位である。980本は上図のとおり見事に各方向に広がっている。
彼のスピード及びアグレッシブ性もあって、664本のシングルヒットのうち175本は内野安打である。Altuveのような低身長選手が、試合の半分をホームである広いミニッツメイドパークを行う以上、ほぼ3/4のホームランが引っ張り方向であることは驚くことではない。
⑦Jose Ramirez:スイッチヒッター型引っ張り
2017以降、左打席のOPSは.919、右打席のOPSは.912である。
彼の打撃結果は両打席において似ているが、そのアプローチも似ている。いずれも引っ張ってすくいあげるアプローチである。過去3シーズンにおいて、ライナー/フライの引っ張り割合はメジャートップであり、両打席においてその技術に長けている。左打席であろうと右打席であろうと、彼の長打の3/4以上は引っ張って生み出されている。
<感想>
正解といえる打球傾向はないのかもしれないと感じた。
ただコンスタントに結果を残すバッターの条件として”逆方向にも打てる”というのは一ついえると思う。DidiやGalloは爆発力はあるがコンスタントに活躍しているとはいえないと思うからだ。LeMahieuはヤンスタの恩恵はあれどやはり安定力あるし、Sotoに関していえば最早球界一の打撃力であるように思う。
大谷のセンター方向への割合の高さも特徴的なことだ。彼はいわゆる引き付けて打つタイプなので本来的には”逆方向にも打てる”選手なのかなと思う。スイングが早い結果センター方向が多めになっているのかなと。というか彼の理想形がセンター方向にあるのかなと。不振となった19の後半以降は変化球でタイミングを崩されているように見える。苦手だった左投手にも順応を見せているし今後の活躍をやっぱり見たい。
特質なのはホセラミですね、やっぱり。コンスタントに打ち続けているのに(19前半はアレでしたがフォーム変更の影響と後で語ってる)、極めて引っ張り傾向である。よくわからないけどこれはスイッチの恩恵なのでしょうね。右vs右、左vs左だと、体の内側からボールがくるのでそれを全て引っ張るのはやはり難しい(引っ張りでタイミング取っていると変化球で泳がされる)。スイッチなのでそのケースがなく常に引っ張りのスタンスでいけると。
(余談だけど、座礁のホセラミはTendencieがBalanceですね。上図を知った後だと違和感が少しある。)
他では、Acunaが逆方向に打てる打者と言われていますね。HR競争でもあえて逆方向に打つのを狙っていたのが印象的です。