2020 ポストシーズン込みのヒッターの成績
記事引用元:MLB.com, Mike Petriello, Hitters whose ’20 wasn’t as bad as it looked, Jan. 26, 2021 Hitters whose ’20 wasn’t as bad as it looked (mlb.com)
<記事要約>
1. 2020 レギュラーシーズン(以下、”RS”)で成績がよくなかったヒッターは、果たして本当にそこまで結果が悪かったのか?を検証。検証は、コロナ禍により60ゲームに試合数が短縮された中で、例年より打席数が遥かに少なく(概ね1/3くらい)、その分母数の少ない中での成績を1年単位として他年度と単純比較できるだろうか?という問題提起から行われている。
本来的には、シーズン全体に占めるポストシーズン(以下、”PS”)の打席数の割合は無視できるほどに少なく成績評価をする時には含めずにするのが一般的であるが、2020シーズンに関していえばシーズン全体に占めるPSでの打席数割合が20%に達する選手も一定数おり(CS進出チーム)、そのウェイトが大きいのでRSだけでなくPSでの成績も含めて2020の年間成績の評価を再考しようというのが本企画である。
2. 具体的なサンプルとしてAltuveがまずあげられている。Altuveの2020RSにおける成績は.219(打率)/.286(出塁率)/.344(長打率)であり、なんとwRC+は77である(打者のリーグ平均より23%得点貢献度(打撃)が低かったことを示す)。Altuveといえばかつては首位打者を取ったこともあるほどの好打者であり2020の成績は中々信じられないくらい驚きの数値である(もちろんサイン盗み疑惑等あるがそれ以前から高い打率を残していたことを鑑みるとやはりコンタクトに関しては元々傑出した選手であることは疑いようがない)
Altuveの2014から2019シーズンでの6年間におけるwRC+は124~160のレンジにあり、77というのは信じがたい数値である。
しかし、彼はPSでは人が変わったかのように打ちまくった。守備の問題はあったけども。PS60打席での彼の打撃成績は .375/.500/.729であり、wRC+は235であった。本検証では以下の要領でRSとPSのwRC+を通算する。
Altuveの打席数割合(RS:PS)=78%(210打席):22%(60打席)
AltuveのwRC+(RS:PS)=77:235
77*78%+235*22%=Altuveの2020シーズン(PS込み)のwRC+=112
PSも含めれば、リーグ平均打者より、12%得点を多く創出したというのが今シーズンのAltuveであった。(=そこまで悪いわけではなかった。)
3. 記事では同じ要領で2020シーズン全体の再計算wRC+の結果を一部抜粋しており、カテゴリー別に以下のとおりに区分している。
・RSでは平均以下⇒全体では平均超の選手
• Altuve (from 77 to 112, +35 points)
• Carlos Correa (from 98 to 124, +26 points)
• Chad Pinder (from 92 to 114, +22 points)
• Joc Pederson (from 88 to 105, +17 points)
• Manuel Margot (from 93 to 108, +15 points)
• Marcus Semien (from 92 to 107, +15 points)
• Aledmys Díaz (from 97 to 111, +14 points)
• Austin Barnes (from 94 to 103, +9 points)
・RSで平均超でありPSでさらに成績を伸ばした選手
• Arozarena (from 176 to 209, +33 points)
• Giancarlo Stanton (from 142 to 170, +28 points)
• Gleyber Torres (from 106 to 128, +22 points)
• Corey Seager (from 152 to 166, +14 points)
• Brett Gardner (from 110 to 122, +15 points)
• Jake Cronenworth (from 125 to 136, +11 points)
• Tim Anderson (from 142 to 152, +10 points)
• Michael Brantley (from 135 to 145, +10 points)
・RSからPSで大きく成績を落とした選手
• Will Smith (from 163 to 128, -35 points)
• Brandon Lowe (from 150 to 117, -33 points)
• Chad Wallach (from 76 to 44, -32 points)
• Tyrone Taylor (from 107 to 85, -22 points)
• Joey Wendle (from 116 to 94, -22 points)
• Austin Meadows (from 87 to 68, -19 points)
• Leury Garcia (from 108 to 90, -18 points)
• Willy Adames (from 124 to 107, -17 points)
<感想>
OAKファンとしては、DSでAltuveとCorreaが爆発的に打ってきたのが悪夢だった。
確かに今シーズンは60試合というかなり短い試合数でのRSであり、この結果だけをもって他の年間成績と比較するのは結構乱暴なことだと思うので、今回の検証は非常に良い試みであると思う。
上記の結果見てみると、PSで勝ち抜くのはやはり調子良い打者が何人かいるということが重要だなと感じた(まぁPSでの試合数が多いほどリストアップされやすい検証だからそりゃそうなんだけど)。AltuveとCorreaのHOU、Arozarena、Margot、DiazのTB、Seager、BanesのLAD、CS4チームのうちATLの選手が全く上がっていないが、RSとPSで概ね同じ打撃力を維持できたということなのかな。
本検証結果とは直接関係ないけども、Will SmithのRSでのwRC+は163もあったのか・・・。下げ幅大きいけどもPSでもそんなに悪い印象はない。ATL戦ではWill Smith対決を制して流れをLADに持っていった印象がある。Loweは逆にPSでのwRC+が余裕で平均以下かなと思ったけど意外に117もあるのか。
<参考>
wRC+ (Weighted Runs Created Plus)
打席当たりの得点創出の多さを「リーグで平均的な打者は100」とした場合、何パーセント得点を多く(少なく)創出しているか。
wRC+の構成要素
- 出塁に対する評価 ※wOBA(得点貢献度)を使用
- 打撃による評価 ※wOBA(得点貢献度)を使用
- 球場による補正
wRC+の計算式
- wRC+=(パークファクターを考慮したwRC÷打席)÷(リーグ総得点÷リーグ総打席)
- wRC=((wOBA-リーグ平均wOBA)÷1.24+リーグ総得点÷リーグ総打席)×打席
(wOBAの計算式)
wOBA=
{0.692×(四球-故意死球)+0.73×死球+0.966×失策出塁+0.865×単打+1.334×二塁打+1.725×三塁打+2.065×本塁打}÷(打数+四球-故意四球+死球+犠飛) 引用元:1.02 ESSENCE of BASEBALL
wRC+の一般的な評価基準
- wRC+160・・素晴らしい
- wRC+140・・非常に良い
- wRC+115・・平均以上
- wRC+100・・平均
- wRC+80 ・・平均以下
- wRC+75 ・・悪い
- wRC+60 ・・非常に悪い